多摩川通信

昭和・平成の思い出など

陰謀論では済まない

 

9・11の矛盾 ー 9・11委員会報告書が黙殺した重大な事実」(デヴィッド・レイ・グリフィン/緑風出版)を読み、ドキュメンタリー「911:爆破の証拠ー専門家は語る」を見て、今さらながら陰謀論で済ませられるものではないと思った。

前者は米国の公式報告書である「米国同時多発テロ事件に関する独立調査委員会報告書」(2004年7月)について、同事件の目撃証言・映像・当局発表等との矛盾点を列記したものであり、後者は同事件で不自然に崩壊した世界貿易センター第7ビルについて、構造工学・高層建築・材料工学・制御解体などの専門家たちが公式調査結果の非現実性を指摘したものだ。

 

9・11の矛盾」が示す25項目の矛盾点の中でもとりわけ呆気に取られたのは、ハイジャックされた旅客機から乗客たちがかけたという電話の件である。乗客たちが携帯からかけた電話によって旅客機がハイジャックされたことや犯人が中東系の男たちであることが確認できたとされてきた。

特にピッツバーグ郊外に墜落したユナイテッド航空93便からは11本もの携帯電話が家族にかけられたと報じられ、ハイジャック犯に立ち向かった乗客たちの英雄的行為が世界中に知れわたったのである。上記公式報告書でも家族たちが語った電話の内容が詳細に記された。

 

ところがである。通信技術の専門家たちから疑問の声が上がった。当時の通信技術では上空から携帯電話で通話することは不可能で、携帯電話がかかったとすれば低空においてのみ可能だったであろうというのだ。

米司法省のオルソン訟務長官は、ペンタゴンに突入したアメリカン航空77便に乗り合わせたという妻からの携帯電話でハイジャックされたことを知って当局に通報したと語ったのだが、後日、携帯電話ではなく機内電話(衛星通信)だったと訂正した。しかし、数年後、同機には機内電話が設置されていなかったことが明らかになった。大変具合の悪いことになったがうやむやになった。

 

さらに2006年、実行犯の一味と目された者の裁判でFBIが提出した証拠書類において911テロでハイジャックされた4機全ての通話記録とされるものが示され、13人が35本の機内電話と2本の携帯電話をかけたことになっていた。携帯電話の2本はいずれも低空飛行時のもので、乗客の1人が911番(日本の110番に当たる)にかけたものと客室乗務員がかけたものだったというのである。携帯から電話があったと語っていた家族の中には本人の発信者表示があったと述べていた者が複数いた。これら家族と公式報告書の立場は一体どうなるのか。

機内電話が使われたというが本当だろうか。アメリカン航空77便は北米大陸を横断する長距離便だったにもかかわらず上記のとおり機内電話の設置はなかった。他の機体には設置されていたことが確認されているのだろうか。機内電話を利用するにはクレジットカードを差し込んで認識番号と電話番号を入力する手間がかかった。乗客や乗務員が殺傷され、他の乗客たちは機体後部に集められたと伝えられた緊迫した状況下で11人の乗客が平均3回ずつ機内電話を使ったことになるのだが、どうも腹に落ちない。

 

この事件は壮大な虚構だったのではないかという疑念がつい浮かんでしまう。アメリカン航空77便がペンタゴンに突っ込んだ現場でも、ユナイテッド航空93便が墜落した現場でも、遺体は視認されていない。ハイジャックされたという4機の旅客機にはそもそも乗客がいたのかという疑念さえ浮かぶ。逆に本人の携帯から電話があったという家族らの話が本当だとしたら、本人は上空にはいなかったということだ。



当時の映像の中で最も強く虚構を疑わせるのは世界貿易センター第7ビルの崩壊である。旅客機が突入したツインタワーとは異なり、第7ビルは特段のこともなかったのに突然きれいに崩落してしまったのである。まことに場違いな映像だった。

公式報告書は第7ビルの崩壊については一切言及せず、2008年に米国国立標準技術院が代わりに調査結果を公表した。それによれば、下層の6つの階でオフィス火災が生じたのが誘因となって支柱に構造上の損傷が生じたものだとして、爆弾や制御解体の証拠は何一つなかったと結論づけられていた。

 

しかし、「9・11の矛盾」は、第7ビルで連続する爆発に遭遇したという5人の証言を示している。同ビル内の緊急対応センターに向かったニューヨーク市非常事態業務担当副局長と同市所管法人弁護士は、ビル内に人気がないことに気づき電話をしたところ、今すぐそこを離れろと言われ、階段を降りる途中で爆風に吹き飛ばされた。同ビルの近くにいた警察官・救急隊員・新聞記者は、連続する爆発音とともに窓が全て飛び散り、一瞬の後、最下部の階がへこんでビル全体があとに続いたと証言した。

911:爆破の証拠」にはビル崩壊時の映像が挟まれているが、第7ビルとツインタワーであった爆発音と衝撃が捉えられており、ツインタワーから巨大な鋼材が百数十メートルも横に飛ばされているのが映像として残っている。

ニューヨーク市消防局の消防士たちは第7ビルの消火活動を一切しなかった。どこかからビルが倒壊するから退避せよという情報が流れていたからだ。警察官たちもその情報を共有していて、ビルの周囲にいた人々に退避を呼びかけた。

 

上記「爆破の証拠」で専門家たちは、科学的な根拠を挙げて第7ビルの崩壊は人為的なものだったという見方を示している。高層ビルの設計者たちは、高層ビルは火災が原因で崩壊することはないしその実例も皆無だと断言する。大型旅客機が衝突しても倒壊しないように設計されているとも言う。

一方、制御解体の専門家たちは、第7ビルの崩落現場で外壁がビルの真ん中に積み重なったのは完璧な制御解体だったことを示していると言い、補助的な爆薬なしにビルがあのように無抵抗状態で崩落することはあり得ないと語る。不自然に対称的な崩落はビル下部の支柱が同時に切断されたことを示しているとも言う。

 

第7ビルの崩れ落ちた鋼材は、本来、技術的検証を行うため標準化された手続に従って保存・記録・分析が行われなければならなかったのだが、膨大な量の鋼材が違法に持ち去られて中国に送られてしまったため物的証拠が失われた。反応促進剤すなわち爆発物が用いられたか否かについても適切な調査が行われなかった。専門家たちが国立標準技術院に対して爆破の証拠を探したのかと尋ねたところ「爆発物もその残留物も探していない」という回答だったという。「高層ビルで爆発があったという事実だけで調査の必要があったのであり、適切な調査が行われなかったために我々は本当は何が起こったのか知らないのだ」と専門家たちは嘆く。

 

それでも現場には重要な遺物があった。溶解した鋼材が見つかったのだ。一部は溶けて蒸発していた。鋼鉄の融点は1538℃であり、材料工学の専門家はオフィス火災でそのような高温に達することはないと断言する。ジェット燃料の燃焼でも1000℃を超えることはない。にもかかわらずツインタワーの上層部から溶けた鋼材が流れ落ちる映像が残っている。崩壊現場でも溶けた鋼鉄が流れているのを目撃した消防士たちがいたが公式調査では全て無視された。

世界貿易センター崩壊現場の粉塵の6%は溶けた鉄から生じた微小な球体だったことも判明した。専門家はそれはテルミット(焼夷剤)が使用された直接的証拠だと言う。テルミットはわずか2秒で2480℃の高温をもたらす。さらに、がれきの中から未反応のテルミット状の物質が見つかった。それはナノテルミットと呼ばれる軍用の新型テルミットだった。

専門家たちは客観的な証拠について政府から独立した調査が必要だと訴えている。



約3千人の死者と3万人に及ぶ負傷者を出したこの事件をテレビを通してほぼリアルタイムで見た。その真相がうやむやのまま、過去の出来事にしてしまっていいのだろうか。この巨大な疑惑が放置されたままであることに、民主主義の理念が足元から劣化していくような言い知れない不安を覚える。